日本文化にふれるお散歩でした【八丁畷駅】

京急本線「八丁畷(はっちょうなわて)駅」。フリガナを付けないと初見ではなかなか読めない駅名のひとつかもしれません。1915年に開業したこの駅は、JR東日本の南武支線も走っているものの、駅業務は全て京急が行っている一風変わった駅です。
そんな八丁畷駅の名物・名所を探しに、早起きをしてお出かけしてきました。
入手困難! 大人気せんべいのヒミツを探る
駅を出て、東に1㎞ほど歩いたところにあるのが、「堂本 元木本店」です。堂本の商品でひときわ人気なのが「大師巻(だいしまき)」。50年以上作り続けている伝統あるせんべいですが、「神奈川県指定銘菓」に選ばれたのは2014年、「かながわの名産100選」に選ばれたのは2019年と、名実ともに「堂本」の看板商品になった煎餅なのです。

とてつもなく人気だとの前評判から、私が店に行ったのは平日の朝8時半ごろ。前の人から順に希望の商品を聞かれ、引換券をもらいます。私がもらった引換券は138番。138組目の会計だということです。そのまま会計の列に並ぶもよし、一度店を離れて再来店するもよし。
※上記は取材日のもので、順番や在庫の有無は時期や日によって異なります。

早くから並んで手に入れた大師巻ですが、店が購入制限をしているからこそ、なんとか手に入れられたのだとしみじみ…。
煎餅をかむと、同じタイミングで海苔がパリッ。いい音と一緒に磯の香りがふわっ。シンプルなおいしさというのは、まさにこのことです!
揚げ煎餅がお大師様、海苔が袈裟(けさ)のようだったことから「大師巻」と名付けたのだそう。縁起がよく、贈り物にも喜ばれる一品です。

大師巻以外の商品は、店内の商品を手に取りレジまで持って行けば購入可能です。
堂本のもうひとつのイチオシ商品は「だるま煎餅」。実は、大師巻よりも前の1954年に神奈川県指定銘菓に認定された名品です。
川崎大師(平間寺)の参拝土産として愛用されている歯ごたえしっかりの煎餅です。

だるま煎餅の味は、醤油やザラメなど全部で6種類。そのうち気になって購入したのは、「砂糖」と「七味」です。
「砂糖」はだるまの形が雪だるまみたいにも見えて、皿に出したときにカワイイ感じ。口の中でスッと砂糖が溶けて煎餅とよく混ざります。
一方、「七味」は食べる前から香るほどしっかりと七味唐辛子がまぶしてあります。ピリッとした辛さがあり、お酒のお供にもよさそうです。
ギフトシーズン等は特に混むとのこと。ゆっくり楽しみたい方は時期をずらすのも手かもしれません。
堂本 元木本店
■住所:〒210-0021 神奈川県川崎市川崎区元木1-2-4
■電話番号:044-222-2454(電話対応時間10:00~17:00)
■営業時間:9:00~17:00
■定休日:日曜・祝日・年末年始
■アクセス:京急本線「八丁畷駅」徒歩13分「京急川崎駅」徒歩16分
■WEBサイトURL:堂本製菓株式会社
※混雑時や並び列がある場合、堂本の駐車場は利用できません。近隣のコインパーキングをご利用してください。
■スポット情報:https://newcal.jp/spot/KWA000020
能楽堂にドキドキの初潜入!
堂本を離れて10分ほど歩くと、見えてきたのは「川崎能楽堂」。1986年に大日日本電線株式会社が自社工場の跡地に建設し、川崎市に寄贈したそうです。2026年は記念すべき40周年。
川崎能楽堂の特徴は、なんといっても多目的に使えること。能楽(能と狂言)の舞台だけでなく、日本舞踊、琴や三味線といった邦和楽、演劇など様々な用途で利用することができる施設です。

座席は最大6列しかなく、一番後ろの席からでも演者の気迫を感じられるほど舞台との距離が近いのも特徴です。
舞台正面には、大きな松の木。能が始まった室町時代から、人が集まるところに松が生えていたり、長生きの象徴とされていたり。常緑なので、演目の季節を問わず存在できることも描かれている理由なのだとか。

能楽堂は舞台でありながら、「どん帳(幕)」がありません。代わりにあるのが演者が出入りするところにある5色の「揚げ幕」です。
控室のことを「楽屋」と言いますが、能では「幕屋」と言います。その由来はこの「揚げ幕」をめくって演者が出入りするからだということ。

今回お話をうかがったのは、川崎能楽堂で能楽教室を行っている鵜澤久(うざわ ひさ)先生。1990年からは、子ども向けの能楽教室をはじめ、能を広めることにとても熱心に取り組んでいます。
「重要無形文化財総合指定能楽保持者」であり、「せっかく能楽堂があるのだから、川崎市の子どもには一度は能にふれてほしい」と話す鵜澤先生の目はキリリと力強いものでした。

取材日は大人向けの能楽教室が開催されていました。
謡(うたい:セリフのこと)のおけいこでは、手でリズムをとったり、文章の意味や登場人物の気持ちを解説したりしながら、生徒さんが能の世界に浸りやすい工夫をしていました。
抑揚のある謡の声が心地よく、和室内に響きます。

舞(まい:動きのこと)のおけいこは、足袋を履いて能舞台で行います。
現代演劇では「悲しみ」を表現する時に泣き叫ぶか、ぐっとこらえるかといった表現の仕方は役者次第ですが、能では悲しみを表現する型(動き)が決まっています。まるで手話のよう。
約250種の型を覚えて、それを物語に合わせて組み合わせて舞うのだとか。覚えるだけでも大変そうです。

川崎能楽堂での公演前には、初心者のための事前講座を行っています(参加費500円)。作品の解説や能の世界観を少し勉強してから舞台を観ると、より深く能を楽しめそう。
見やすくて人気なのは正面席ですが、能がはじめてという方はお手頃価格の脇正面席から始めてみるのもおススメです。
川崎能楽堂
■住所:〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区日進町1-37
■電話番号:044-222-7995
■営業時間:9:00~17:00
■定休日:水曜日、年末年始
■アクセス:京急本線「八丁畷駅」徒歩9分「京急川崎駅」徒歩12分
■WEBサイトURL:川崎能楽堂 | 公益財団法人 川崎市文化財団
■スポット情報:https://newcal.jp/spot/KWA000021
体で歴史を感じる
堂本の煎餅も能も、古くから歴史を積み重ねてきた由緒あるものです。一方で、どちらも親しみやすさがあり、誰もが楽しめます。八丁畷駅を朝からお散歩してみたら、歴史にふれ、歴史の重みの上にある”今”を感じることができました。みなさんも八丁畷駅で歴史を感じる散歩に出かけてみてはいかがでしょうか。
Weavee地域ライター/松井美智子