京急本線「神奈川駅」から歩いて数分。横浜駅からも徒歩圏の国道15号線沿いにbuøy(ブイ)横浜工房併設店があります。
店の前には「海洋ごみから生まれたプロダクト」という文字が。
ブイでは、全国のビーチクリーン団体が回収した海洋プラスチックを有償で買い取り、製品化することで、ごみに新たな価値を与えています。また、製品を売った利益を団体に還元し、海の美化活動が続いていく仕組みを支えています。
そんな活動をしているブイが、海洋プラスチックごみを使ってキーホルダーを作るワークショップを開催しているというので、さっそく参加してきました。
ごみと見るか 資源と見るか
世界にひとつのキーホルダー
buøy横浜工房併設店(以下、ブイ)は、体験工房兼ショップの6畳ほどのスペース。カラフルなインテリア雑貨が並び、一見すると店内に海洋ごみは見当たりません。
キョロキョロする私にスッと段ボール箱を差し出したスタッフの小林さん。中をのぞくと、プラスチックのごみでした。「全部海岸に落ちていたもの、そのまま」なのだとか。見たことのある製品も含まれていて、心が痛みます。

中央下の緑色のものはライター
「ワークショップを始める前に、海洋ごみについて話をさせてください」とおもむろにパソコンを開いた小林さん。
パソコンに映し出されたのは、私が想像していた以上の海洋ごみの実情と、それを何とかしたいと奮闘するブイでした。

スタッフの小林さん
10分ほどのレクチャーのあとは、さっそくキーホルダー作りです。キーホルダーの形はカメとマグロの2種類あり、私はカメを選びました。
型に入れるのは細かく砕かれたプラスチック片。プラスチック片は、色と回収地域(ごみを拾った場所)によって、30以上のビンに分けられていました。

その中からキーホルダーに使うものを選びます。私は、色合いに惹かれて伊豆急下田の青系と口永良部島の黄色系を、地名に惹かれて三浦半島の黒系を選びました。
京急沿線とも縁の深い「三浦半島」。この灰色のプラスチックは、ごみとして三浦半島に落ちていて、それを拾った人がいて、今、カラフルな素材に姿を変えて私の手元にあると想像すると、目の前にあるプラスチック片が尊いもののように感じました。

型に入れたプラスチック片を透明のフィルムで挟んだら、熱圧着機へ。「ジュー」「パチパチ」と音をたてながら溶けていきます。
砂浜に流れ着いたプラスチックの材質は、さまざま。また海を漂っていた時間がそれぞれ違うので、劣化具合が変わってきます。
そんなプラスチック片たちがどのように溶けるかは偶然の産物。世界でたったひとつの色合いを生み出すのです。
絵の具のように混ざることのないプラスチック片の色は、溶かしても元の色のまま。とはいえ、もうごみではなく、偶然が生み出した素敵なアートになりました。

バリ(カメの周りの余分な部分)は自宅でカットしてもよいとのこと。一度は持ち帰ろうと思いましたが、切り落としたバリをもう一度溶かし、丸いチップを作っているのだそう。
チップは、スマホにかざすとブイのホームページを見ることができ、活動を広めることに役立てているのだとか。
家でカットすれば、そのままごみになってしまう部分。せっかくなら使える形で残したいと思い、工房内でカットして置いて帰ることにしました。
作品の周りに残った小さな端材まで、次の素材になる。そのことを知ると、目の前の“余分な部分”の見え方も少し変わってきます。
顔が見えるプラスチック
「野菜や果物は誰が作ったか表示されるのに、プラスチックには顔がないんです。だから簡単に捨てられてしまうのかも」。小林さんは、少し切ない顔で話します。
「モノの向こうに顔が見えることで、プラスチックにも愛着が湧くのでは」と考えたブイは、誰が拾ったごみであるかを商品に表示するようにしたのだとか。

写真右側が体験スペース
商品に付いているQRコードを読み取ると、そのプラスチックを拾った人や団体の名前、経歴、拾った海岸の様子などを知ることができます。
ごみを拾っている人はみんな「海岸をキレイしたい」という思いで拾っています。そんな人のぬくもりが詰まったプラスチックだと知ると、手に取った商品にも愛着が湧いてきます。

海岸のごみを拾っているのは、それぞれの地域で活動をしているボランティア団体。ごみを拾った後に色分けまでお願いしているのだとか。
お願いしている色分けは、赤・青・黄・緑・黒・白の6色。この中に含まれていないオレンジ色を赤とするか、黄色とするかなど、細かい色の分類は各団体に任されていると言います。「それがそのまま、できあがった商品の味になるのも面白いところ」です。

現在、海岸のごみ拾いに協力しているボランティア団体は、30以上。
各団体には、でき上がった商品を特別価格で販売し、地元のお土産やふるさと納税の返礼品として活用してもらっているのだとか。ごみからできたものが、地域の魅力を伝えるツールになっていました。

ブイの商品は、手に取ったそのものの重さがごみの重さ。それだけの重さのごみが海岸に落ちていたということ、そして、その重さだけごみが海岸からなくなったことを表しています。
商品はそんな事情を忘れてしまうほど美しい色合いを放っていますが、ふと思い出した時に実際の重さ以上の意味を感じる商品です。

扇風機と飲み物が欠かせない社内です
これまでトレイや花瓶、キーホルダーなど小さめの雑貨を販売してきましたが、今後はもっと大きな商品を作りたいと話す小林さん。新商品のイスに使う海洋プラスチックは1つあたり1.7kg。カメのキーホルダー340個分です。
今はまだ、利用するより集まるごみの方が多く、もっと大きな商品を作ってもっと多くのごみを有効活用していきたいのだとか。
夢はブイがなくなること
「プラスチックは軽くて、丈夫。耐水性も優れていて、決して悪者ではないんです。大事なのは私たちの向き合い方」。
ものを購入するときに自分に必要なものかを考えること。購入したあとに大切に使うこと。そんな当たり前の小さな積み重ねが海岸のごみを減らすことにつながるのかもしれません。
buøy-ブイ-は、いつか自分たちの仕事がなくなることを願いながら、日々できることに懸命に向き合うブランドでした。
取材日 2026/05/27
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。
スポット情報
buøy-ブイ-横浜工房併設店
■住所:〒221-0057 神奈川県横浜市神奈川区青木町6-24 田辺ビル1階
■定休日:不定休
■アクセス:京急本線 「神奈川駅」 徒歩5分、「横浜駅」徒歩10分
■WEBサイトURL:buøy|海洋プラ材料のインテリア雑貨buoy(ブイ)
■オンラインショッピングサイト: SHOP — buøy — Life Above Water
■Instagram:Instagram
■予約: https://buoy.stores.jp/reserve/buoy-yokohama/2776569#pageContent
※来店による商品の購入、ワークショップは事前予約制です。また、ワークショップは不定期開催となります。