京急本線「金沢文庫駅」の東口を出ると、商店街が広がっています。その商店街を抜けた住宅街の中にぽつんとあるのは、おしゃべりな店主が営むコーヒー専門店。コーヒー選びに迷った時には、豊富な知識をもとに一人一人にぴったりのコーヒーを教えてくれるのだとか。
普段のコーヒー選びに悩んでいた私は、おうちカフェの時間をちょっとイイものにしたいと思い、コーヒー専門店「双実堂(ふたみどう)コーヒー」を訪れました。
農園まるごと味わって
店の前には手書きの看板。その日のコーヒーが3つ、値段と一緒に書かれていました。初めての店だと入るのに少し勇気がいるものですが、価格帯が分かるだけで安心感があります。
自動ドアを開けて入ると「いらっしゃいませ。こんにちは」と笑顔で出迎えてくれた店主。初対面だと思えない気さくさで、私の緊張もあっという間にほぐれました。

意外にも、学生時代はコーヒーを飲むのが苦手だったという店主。でも、コーヒー好きの両親と行ったコーヒー専門店は大好きだったのだとか。幼心に「こんな仕事があるんだ」と思うと同時に、店を満たしていた豆の香りが忘れられなかったと言います。
両親が他界したあと、思い出を形にしようとコーヒー店を出すことを決意。仕事を掛け持ちしながら開業資金を集め、2017年12月、生まれ育った金沢の地で双実堂コーヒーをオープンしました。

店内でひときわ存在感を放っているのは、天井まで届きそうなほど大きな焙煎(ばいせん)機です。オープンは午前11時からですが「朝6時半から焙煎を始めて、終わるのは開店時間ギリギリ」なのだとか。
店のマークは、色の違う丸が3つ。薄い方から、生豆(なままめ)、焙煎中の豆、深煎りの豆、の色を表しているのだそう。

コーヒーは、焙煎するときにどのくらい熱を加えるか、どのくらい煙を吸い取るかで酸味や香りが変わるのだと教えてくれました。
飲んだ時にそれぞれの豆の特徴が出るように考えながら焙煎するのが腕の見せ所なのだとか。コーヒーの話をしている店主は、終始楽しそうです。

中段が苦味のある中煎り~深煎入り
下段がカフェインレスとブレンド
双実堂コーヒーの商品札には、文字がぎっしり!
東ティモール産の豆の札を見てみると「ゴウララ集落」で育てられたと書いてあるだけでも驚きなのに「その場所は寒暖差が激しい」とか「集落の中に小さなグループがいくつか存在している」とか「2丁目のグループリーダーが作った」とか細かな情報がたくさん書いてあり、豆の履歴書のよう。
ゴウララ集落に行ったことのない私でもそこがどんな場所なのか想像することができ、コーヒー豆に親近感がわきました。
「農園をまるごと感じてもらいたい」と話す店主のオススメはブレンドではなく、シングルコーヒー(豆を混ぜていないもの)です。

コーヒーは農作物です。店に届くコーヒー豆は収穫したままの状態で、薄い緑色をした生豆(なままめ)。
現地で選別はしているそうですが、店に届いてからの選別も欠かせないのだとか。
小さな小石や焙煎できないくらい小さな豆を取り除き、豆を商品化していくために選別する作業に3〜4時間を費やしていると聞いて驚きました。

ふっくらした焙煎した豆(写真右)
コーヒー豆の良さを生かす脇役たち
「普段はカフェオレを飲むことが多いけれど、実はブラックで飲んでみたいと思っている」と相談して、店主が選んでくれたコーヒーは2つ。
エチオピアのジオ地方ゲラ村のものと、東ティモールのゴウララ集落のマヌエルさんが育てたものです。どちらもスーパーではあまり見かけないもので、専門店ならではの特別感!
豆の特徴を最大限生かすために、一緒に入れるミルクやお供のスイーツも大事にしてほしいと話す店主の目には力強さがありました。
浅煎りでフルーティーなものには、食パンやクッキー、レアチーズケーキなどさっぱりとしたお供、深煎りで苦めのコーヒーには、チョコケーキやモンブラン、羊羹やどら焼きなどしっかりとした甘さのお供が合うのだとか。

…とアドバイスをされてもなお、オススメされたコーヒーに何を合わせればいいか悩んでいると、レジ横のチョコレートを紹介してくれました。
コーヒーカップを意味するカフェタッセと名のついたチョコレートは、コーヒーに合うように作られたものだそうです。
味までお任せで選んでもらって「じゃあ、それで!」と即決。
自宅に帰って、自分のために選んでくれたコーヒーを入れて、チョコレートをぱくり。
購入したカフェタッセのミルクチョコは、甘みよりコクがしっかりとしたチョコレートです。コーヒーとの相性もよく、幸せなひとときを過ごすことができました。

店内でのコーヒー1杯サービス。
まわりの目を気にせず、取材できるようにと
腕章を貸してくれた店主の配慮に感激
おしゃべりは
コーヒーとコーヒー好きな人のため
コーヒーは「コーヒーチェリー」という植物の種。中に入っている2つの生豆が、生産者と消費者のようでもあり、親子のようでもあり、夫婦のようでもあり、さまざまな尊いものに見えてきたという店主。そこから店名を「双実(ふたみ)」とつけたのだと言います。
生産者もお客さんも、そして、コーヒーの個性までも大事にしている店主。
選び抜かれたコーヒーで、のんびりとおうちカフェ時間はいかがでしょうか。
取材日 2026/5/11
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。
スポット情報
双実堂コーヒー
■住所:〒236-0021 神奈川県横浜市金沢区泥亀1-16-14 クラスカ文庫1階
■電話番号:045-353-3003
■営業時間:平日・土11:00~18:30/日・祝11:00~18:00
■定休日:毎週火曜日、その他臨時休業あり
ショップ情報 | 双実堂コーヒー
■アクセス:京急本線 「金沢文庫駅」 徒歩3分
■WEBサイトURL:金沢文庫のコーヒー豆店『双実堂コーヒー』
■Instagram:Instagram