
ビール職人の頭の中を
のぞいてみたくなる
「この人の頭の中って、どうなっているんだろう?」
美味しいビールに隠された複雑な計算の話をうかがっているうちに、私の頭にはそんな疑問がわいてきました。
今回訪れたのは、京急本線「金沢文庫」駅西口から徒歩約2分の場所にある南横浜ビール研究所。元エンジニアの醸造責任者が緻密な計算に基づいてビールを設計する、まさに「研究所」のようなクラフトビールのお店です。

店内に入るとまず目に入るのは、ガラス窓の向こうに並ぶ大きな寸胴の鍋。ここでは店舗の1階で実際にクラフトビールを醸造しています。
こうした店内醸造のビールを、その場で新鮮な状態で楽しめるお店は「ブルーパブ」と呼ばれています。
ものづくりからビールづくりへ

醸造責任者の荒井さんは、もともと機械製造業のエンジニアとしてものづくりの仕事をしていた方。
ビールやお酒は大好きでしたが、当時はあくまで消費者の立場でした。
転機となったのは2016年。
高校の同級生であるオーナーと一緒に、この店を始めることになったそうです。
現在お店で扱っている定番ビールは、ペールエール・ヴァイツェン・インペリアルブラウンポーター・ダブルIPAの4種類。
「定番」とはいえ、毎回同じレシピで作るわけではありません。大手メーカーと異なり、年間約100回というハイペースで仕込みを行うため、短いサイクルで常に味が改良され続けているのも大きな魅力です。
果物のビールも!
遊び心あふれるラインアップ

定番のラインアップを見ると、クラフトビール好きにはたまらない本格派。一方で、初心者でも楽しめるビールも用意されています。
例えば、期間限定で登場する「桃たっぷり やば桃ヘイジーネクター」。桃をふんだんに使った、クラフトビール初心者にも飲みやすい一杯です。
これまでには、メロン・モモ・イチゴ・ブドウ・ナシ・柑橘・など、さまざまなフルーツビールを醸造してきたそう。
さらに、金沢八景の八景島シーパラダイスでは「八景島ハニーレモンエール」というオリジナルビールも提供されています。

数字と感覚で組み立てるレシピ
ビールってどうやって作るのかをうかがうと、その世界はかなり奥深いものでした。
麦芽だけでも常時7〜8種類。さらにホップも新しい品種や濃縮タイプなど、次々と新しいものが登場します。それぞれの特徴を理解しながら、材料の配合・温度・時間・発酵の条件などを計算し、レシピを組み立てていくのだそうです。その計算は複雑で、私だったら、頭から湯気が出てしまいそうです。
まさに理系の研究のような世界。
ほほえみながら醸造責任者はこう話してくれました。
「ビールを醸造するにあたって、発酵前の麦汁の濃度や発酵後の濃度、苦味などについて、あらかじめ目標となる数値を設定して、作り方を計算しています。そのため、失敗することはありません」
確かな味覚と、それを記憶する経験。そして前職のものづくりで培われた“計算する力”。それらが合わさって、このビールが生まれているのだと感じました。
ブルワー同士のコラボレーション
南横浜ビール研究所では、他のブルワリーとのコラボレーションも行っています。
そのひとつが、キリンのクラフトブランドSPRING VALLEY BREWERYのマスターブリュワー・田山智広氏との共同醸造です。
この店の1階で一緒にレシピを考え、仕込みを行い、「温故知新ペールエール」というコラボビールが誕生しました。完成したビールは、代官山にあるSPRING VALLEY BREWERY TOKYOのイベントでも提供されたそうです。
大手ビールメーカーの醸造家と、街のクラフトブルワリーが、ビールという共通言語でつながる世界の面白さを感じるエピソードでした。
まずは飲み比べセットがおすすめ

初めて訪れる方におすすめしたいのが、飲み比べセット。100mlサイズで5種類のビールを楽しめます。
メニューにはそれぞれの次のようなビールのデータも書かれています。
OG:発酵前の麦汁の濃度(コク)
FG:発酵後の濃度
ALC:アルコール度数
IBU:にがみの指標
ホップ:使用ホップ
この一覧を見ながら飲むと、自分の好みが数字でもわかってきます。
ちなみに私は、IBU(にがみ)が高いビールが好きだと気づきました。
こういうビールは、少しずつ味を比べながら飲むのが楽しいですね。

飲み比べセットには入っていませんが、ぜひ試してほしいのがダブルIPA。
ホップがたっぷり使われた、香り豊かな一杯でした。ぜひ、お店で味わってみてほしいビールです。
地元に愛されるビールを
これほど計算し尽くされたビールですが、店の雰囲気はとても柔らか。
頑固な職人の店というより、むしろお客さんへの優しさが伝わってきます。

オーナーはこう話してくれました。
「私たちのビールは、常識的に美味しい、みんなに愛されるビールになってほしい。地元の人たちが自慢できる店になりたいんです」
計算し尽くされたこだわりのつまった優しいクラフトビール。
金沢文庫で、そんな一杯を味わってみませんか。
取材日 2026/02/17
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。
スポット情報
南横浜ビール研究所
■住所:〒236-0042 神奈川県横浜市金沢区釜利谷東3-1-4
■電話番号:045-781-5055
■営業時間:
・月~金:17:00~24:00(L.O.23:30)
・土:12:00~24:00(L.O.23:30)
・日・祝:12:00~22:00(L.O.21:30)
※日・祝は翌日が休日の場合、24:00閉店になる場合あり
■定休日:なし(不定休の場合あり)
■アクセス:京急本線「金沢文庫駅」西口 徒歩約2分
■WEB URL:http://beerlabo.hatenablog.jp/
■Instagram:https://www.instagram.com/beerlabo/