三浦海岸の裏路地に佇む居酒屋「清丸」では、店主・鈴木誠一さんがカウンターから温かく迎えてくれます。

漁師の父を持つ鈴木さんは、幼い頃から三浦の地魚に親しみ、料理人としての腕を磨くとともに、魚への知見を深めてきました。そんな鈴木さんがつくる「金目鯛の塩煮」(時価)は、自慢の出汁と素材が響き合う滋味深い一皿です。
出汁が導く、地金目鯛のやさしい旨み

トロ箱の上に乗るのは、松輪港でその日に水揚げされた地金目鯛。
取材日はあいにくのシケ続きで“中”サイズでしたが、鈴木さんは「本当は特大を食べてもらいたかった」と少し悔しそう。大きさひとつでも味わいがまるで違うといいます。

金目鯛の塩煮を支えるのは、鰹節2種と昆布を使った自家製の出汁です。1時間かけてじっくりと火にかけたあと、一晩寝かせることで味わいが落ち着き、角のない深みが生まれます。さらに厚削りの鰹節を加え、3時間ほど煮込むと、香り立つ黄金色の出汁が完成します。

出汁を味見させてもらいましたが、香り高く、鰹節と昆布の風味が凝縮されていました。

その出汁に、金目鯛の頭と半身を浸し、塩と料理酒で調えれば完成。出汁を吸ってふっくらとした身はやわらかく、ほろほろと口のなかでほどけます。魚の旨みと脂を含んだ煮汁は、よりまろやかに仕上がり、舌の上でやさしく広がります。

「実は、塩も酒も特別なものを使っていません。岩塩や吟醸酒を合わせてみたのですが、出汁の繊細さを邪魔してしまうんです。だからあえて、精製塩と料理酒というごく普通の素材を使っています。主役は魚と出汁ですから」

旅が育てた、清丸の味
「清丸」は各グルメサイトでの評価は高く、口コミにも「どの料理を頼んでも美味しい」と多くの人が声を寄せています。その味の礎を築いたのは、これまでの鈴木さんの“旅路”でした。

箱根の旅館で料理人としての道を歩み始め、東京、横浜、大阪、和歌山の料亭で修行を重ね、休日は九州にまで足を延ばし、名店を訪ねては料理の研究を重ねたそうです。
「関東と関西では、同じ出汁でも旨みの出方がまるで違うんです。水の硬さ、気候、使う素材の違いで味は多彩に変わります」

長年の旅の末、関東・関西それぞれの“いいとこどり”をした味が、今の鈴木さんの料理に結実したそうです。そして1997年に地元・三浦海岸に戻って「清丸」をオープン。以来30年、地元の方々だけでなく、遠方の食通も足を運ぶ名店となりました。

今夜も店舗から漏れ出る笑い声、厨房から漂う出汁の香りは、潮風にのって、静かに三浦の夜に溶けていくようです。
取材日 2025/10/21
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。




スポット情報
創作料理 清丸
■住所:神奈川県三浦市南下浦町3131
■電話番号:046-888-2583
■営業時間などの情報:18:00~0:00
■定休日:日曜
■アクセス:京浜急行「三浦海岸」徒歩2分
■URL:-