【大森町】人間国宝作家の作品を実際に触ってみよう! 山口体験美術館
2026.02.28
おおた

【大森町】人間国宝作家の作品を実際に触ってみよう!
山口体験美術館

大森町駅から徒歩18分。静かな住宅地を歩いていると、突然巨大なモアイやイルカのオブジェが。ひときわ目を引く不思議な建物に「これはなんだろう?」と、思わず足を止めてしまいます。今回は2025年10月にオープンした、この山口体験美術館を紹介します。

「体験」を重視した
新しいスタイルの美術館

私が美術館を訪れるのは、思い返せば10年ぶり。美術の知識もほとんどなかった私は、正直なところ不安を抱えながら取材に向かいました。

そんな私を笑顔で迎えてくださったのは、今回取材にご協力いただいた学芸員の阿南裕太(あなみゆうた)さん。学生時代は現代アートを専攻していた阿南さんは、山口体験美術館で働くことになったときの心境を、「写真でしか見られなかった作品に、実際に触れて展示ができることにワクワクしました」と語ってくれました。

山口体験美術館の外観。虹色のストライプやイルカが目を惹きます

山口体験美術館は、作品を「観る」だけでなく「触れる・体験する」ことができる、新しいスタイルの美術館です。美術館でできる体験は、抹茶体験・絵付け体験・陶芸体験の3種類(2026年2月現在)。中でも人気なのが、人間国宝作家の茶碗を使った抹茶体験です。体験に参加した人からは「実際に作品に触れたのは初めて」「こんなにも作品との距離が近い美術館は見たことがない」と驚きの声が上がるのだそう。

天井に残された配管。工場としての名残を見つけるのも楽しい

もともとこの建物は、建築木材を検査するための土木材料試験場でした。天井には当時のクレーンや配管などがそのまま残されています。取り外すこともできましたがあえて残すことで、町工場として発展してきた大田区ならではの背景を受け継ぎ、今後へ伝えていきたいという想いも込められています。

初心者でも楽しめる
工夫がいっぱいの展示室

館内の展示は1階から3階まで広がり、全部で10の展示室があります。1階の展示室に入ってまず目に飛び込んでくるのは、パブロ・ピカソの陶芸作品。ピカソといえば絵画を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は陶芸作品もたくさん残しています。

阿南さんの推し作品。パブロ・ピカソ「黒と栗色のフクロウの花瓶」(右)

美術に詳しくない私でも知っている名前が出てきたことで緊張がほぐれ、一気に興味が湧きました。身近に感じられる作品をあえて最初に配置することで「知ってる!」と、自然に展示に入り込みやすくなる工夫を感じました。

ピカソの作品の次には、人間国宝である作家たちの作品を紹介する「人間国宝展」の展示が続きます。

「しっとり」の作品を並べた展示室。漆作品が並びます

「でこぼこ」や「つやつや」など質感をテーマに作品が並べられています。阿南さんによると「質感に焦点を当てることで、さまざまなジャンルの作品を並べられます」とのこと。

来館者の中には、美術に関心がある方だけでなく、たまたま立ち寄ったという方も多くいます。作品のジャンルの広さは、阿南さんが展示を決める際に重視しているポイントの一つ。「この作品いいかも」というきっかけを作りたいという想いが込められています。

展示室「つやつや」の作品。鮮やかな色絵磁器が並びます

実際に展示室を回ってみると、幅広いジャンルの作品が並び、見ていてワクワクします。展示のテーマも直感的で分かりやすく「どんな質感だろう」と意識を向けることで、作品の見え方が変わり鑑賞の楽しさが広がっていくのを感じました。

3階にある人間国宝作家が手がけた人形作品も大きな見どころで、その所蔵数はなんと日本一!

人形師として初の人間国宝となった平田郷陽の作品。展示台は阿南さんの手作り

思わず「かわいいですね」と声に出してしまったのが、平田郷陽の人形作品。日常を切り取ったかのような豊かな表情が特徴です。さまざまな人形を見比べていくと、表情やフォルムに作家ごとの個性が表れていることにも気付きます。「多くのコレクションがあるからこそ、作品を見比べることができるのも魅力です」と阿南さん。

窓に作品を展示してステンドグラス風に。館主・山口さんのアイデアです

山口体験美術館の建物は、デザイナーを関与させず館主・山口伸廣(やまぐちのぶひろ)さん自らが手がけた空間です。阿南さんは「山口ワールド全開の建物です」と表現し、この建物の造りも美術館の個性だと語ります。

抹茶体験と絵付け体験、
私もやってみました!

展示を見た後は、抹茶体験や絵付け体験が楽しめます。実際に私も体験させていただきました。

鈴木藏の志野茶碗。力強さを感じます

まずは人間国宝が手がけた茶碗を使った抹茶体験。もちろん私も、実際に作品に触れるのは初めてです。せっかくの機会なので一番大きな器を選んでみました。手に取ると、でこぼこした触感が伝わってきます。人間国宝展で質感に注目して作品を見ていたこともあり、自然と触った感覚を意識しながら味わうことができました。

体験を重視している背景には、館主・山口さんの「作品は道具として使用されるべきだ」という考えがあります。貴重な作品に触れることに緊張するお客様も多いといいますが、阿南さんは「気負いせず、ありのままの作品鑑賞と体験を楽しんでいただけたら」と話します。

実際に作成したお皿。アーティストになった気分!

絵付け体験は、皿に絵を描き、完成した作品をすぐに持ち帰ることができます。何を描こうか迷ってしまったときは、自分の好きな作品をモチーフにするのがおすすめ。私はピカソの陶芸作品をアレンジして描いてみました。自分だけの作品を作る楽しさは、大人はもちろん子どもにも喜ばれる体験だと感じました。思い出として形に残るのが嬉しいですね。

余韻に浸りながら
カフェでランチタイム

牛スネ肉の赤ワイン煮込みのランチセット。野菜は循環型農家から直送されたものです

美術館にはカフェも併設され、ランチやケーキセットを楽しむことができます。今回は牛スネ肉の赤ワイン煮込みのランチセットをいただきました。サラダにはドレッシングなどをかけず、そのまま味わうことで野菜本来の甘みや香りがしっかり感じられます。お肉は食べ応えがあり、コクのあるスープとの相性も抜群。美術館の展示の余韻に浸りながら、ゆったりとしたランチタイムを過ごしました。

ショップに並べられた焼き菓子。お菓子目当てで来る方もいるそう

また、入口付近にはミュージアムショップがあり、おしゃれなグッズや手作りのお菓子が並びます。美術館のお土産にぴったりですね。

今回は山口体験美術館を紹介しましたが、いかがでしたか? 私は久しぶりの美術館に少し緊張していましたが、展示を見たり、体験やランチを楽しんだりするうちに自然と肩の力が抜けていきました。美術に詳しくなくても気負わず過ごせる空間で、大人から子どもまで楽しめるすてきな場所です。皆さんもぜひ山口体験美術館で、美術に触れる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

スポット情報

山口体験美術館
◼️住所:143-0024 東京都大田区中央八丁目28-12
◼️電話番号:03-6410-2415
◼️開館時間:9時30分〜17時(最終入館は16時30分)
◼️休館日:火曜日(祝日の場合は開館、翌日に休館)
◼️料金:一般/1,400円(大田区民は1,000円)小・中・高校生/500円 未就学児/400円(体験なしの場合は無料)
◼️アクセス:京急本線「大森町駅」徒歩18分
◼️WEBサイトURL:https://otaart.com/
◼️Instagram:@taikenmuseum

Weavee地域ライター/佐々木亜莉

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