「京急新子安駅」から歩いて4分ほど。国道15号沿いにあるのは「トマトケチャップ発祥の地」と書かれた石碑です。日々、当たり前に使っているトマトケチャップが生まれたのは、なんと新子安だったのです。

日本初のトマトケチャップをたずねて
1896年(明治29年)に作られた日本初のトマトケチャップを復活させようと立ち上がったのが、丸山さん。
長野県でトマトソースを作る仕事をしているうちに、いつから日本にあるのだろうと気になったのだとか。文献から日本のケチャップの始まりが横浜だと知った丸山さんは、居ても立ってもいられず横浜に。昔から気になったことはトコトン知りたい性格なのだそうです。

日本初のトマトケチャップを作ったのは、清水屋の清水與助(しみずよすけ)。
横浜に来た丸山さんは、図書館や歴史的な施設を訪ねる中で季刊誌『横濱』を目にしました。そこに載っていたのは、日本初のトマトケチャップを作った清水屋のラベル。思い切って担当者に連絡をしたら、清水與助のお孫さんを紹介してもらえることになりました。丸山さんにとっては嬉しいサプライズ!
「ズク」を求めて海外へ
1860年ごろから開港の地・横浜では外国人に向けた西洋野菜の栽培が盛んでした。新子安もその一つ。 野菜を生産する中でどうしても出てきてしまうのが、傷がついたり、形が悪くなったりしたものです。食べられるのに穴を掘って埋めていたトマトをなんとかしたいと思った與助は、廃棄されるトマトを使ってケチャップを作り始めました。

與助のお孫さんから当時の思い出話を聞く中で、どうしても思い出せないと言われたのが「ズク」です。
横浜港に「ズク」が届くと家族みんなで取りに行き、新子安まで運んでいたのはよく覚えていると話すお孫さん。しかし、「ズク」が一体何を指しているのか、正確には記憶していませんでした。

「ゴツゴツしたもので、南からの船に乗ってきていた」というお孫さんの記憶を頼りに、「ズク」を探しに世界を旅することにした丸山さん。
「ズク」らしいものを見つけては、日本に持ち帰ってお孫さんへ確認するものの、なかなか正解にたどり着けませんでした。しかし、あきらめずにお孫さんや香辛料の専門家から話を聞いたりするうちに、丸山さんは執念で「ズク」が何なのかをつきとめます。
「ズク」の正体は「ニクズク」(ナツメグの和名)。
「ズク」の正体が分かったことは、清水屋ケチャップ復活への大きな一歩になりました。
100年経っても目を引くデザイン
丸山さんは清水屋ケチャップ自体はもちろん、パッケージにも惚れ込みます。
現在は「KETCHUP」と書くケチャップですが、日本初のトマトケチャップを作ったころは聞こえた音に英単語を当てはめて「CATSUP(キャッツアップ)」と書いていたのだそう。キャッツアップ、キャッツアップ……。確かに「ケチャップ」に聞こえるかも。
お孫さんが大事にとっておいたラベルにも「CATSUP」の文字があります。丸山さんは、金で縁(ふち)どられた清水屋のラベルに與助のセンスの良さを感じ、魅了されたのだとか。色鉛筆で書かれたラベルは、どれも100年以上前のものとは思えない美しさでした。

「100年以上前のデザインでありながら現代でも通用する」と考えた丸山さんは、與助に敬意を表して当時のラベルをそのまま使うことに決めました。
丸山さんが横浜に来てから、およそ2年。熱い思いと努力の甲斐あって、清水屋ケチャップは復活しました。
清水屋ケチャップでお手軽!レシピ
清水屋ケチャップのオススメの使い道は「スプーン1杯のケチャップ」。
丸山さんによると、生姜焼きやサバの味噌煮、ぶりの照り焼きなど、みりんの代わりにスプーン1杯入れて調味料として使うのだとか。ホットドッグやソーセージなどでケチャップをそのまま使っていた私にとって、目からうろこの話でした。
さっそく作ってみると、いつもより色が鮮やかに。
ケチャップを入れるならと醤油の量を減らしたのですが、それが正解。コクが出るだけでなく、醤油を減らした分の減塩にもなるので健康にもよさそうです。
入れたケチャップは奥の方でほんのり感じる程度で、食べた家族は気づかないくらいでした。
※3人前でスプーン1杯が目安です。

丸山さんが次に開発したのは、ハバネロケチャップ。
口に入れた瞬間はトマトの旨味、後味はピリッとしたハバネロ入りの清水屋ケチャップです。
こちらを使ったオススメ料理は「エビチリ」。
ハバネロケチャップに水を加えて好みの辛さに調整したら、片栗粉をつけて焼いたエビとネギのみじん切りを入れるだけという手軽さです。

最後に香りづけのゴマ油を少し加えればできあがり。
エビチリは作るのが難しい印象でしたが、ハバネロケチャップを使えば簡単。料理時間や手順も少なく、家事の負担も減りそうです。
ネギを同じ大きさに切れない私でも作ることができました。
味わい深く、いつまでも
清水屋のトマトケチャップ復活の裏には、いくつもの奇跡がありました。ケチャップの起源が気になった丸山さんが横浜に来たこと、日本初のケチャップを作った清水與助のお孫さんがお元気だったこと、そのお孫さんと丸山さんが出会えたこと、丸山さんが「ズク」を探し続けたこと。
偶然の奇跡と丸山さんをはじめ多くの方の努力で復活した日本初のトマトケチャップ。素材本来の味わいを口いっぱいに感じながら、100年前に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。
スポット情報
清水屋&CRAFT
■WEBサイトURL:
清水屋ケチャップ - 公式オンライン
横濱屋本舗
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横濱屋本舗 - 出汁にこだわる加工食品ブランド横濱屋本舗
Weavee地域ライター/松井 美智子