歳月が作り上げた絶品ナポリタンで一本勝負!~TAKEYA(たけや)~

京浜急行電鉄「黄金町駅」を降りて目の前にあるのは、桜で有名な大岡川。川を渡って少し入ったところにナポリタンの名店があると聞いてさっそく行ってきました。
1984年開業のTAKEYA。もともとは同じ場所で両親が竹家(たけや)旅館を営んでいました。旅館をたたむときに、場所を引き継ぎ念願だったカフェをオープンしたマスター。店の名前は旅館の名残で「TAKEYA」としたそうです。
店に入るなり「うちはナポリタンに特化した店なの」と笑顔で言われたら、反射的に「それでお願いします」と言ってしまいます。聞くところによると、少し前まではトーストやグラタンなども提供していたそうですが、最近はメニュー表を置かなくなってナポリタン一本でやっているのだそう。

店の片隅には、レコードの自動演奏装置「ジュークボックス」がありました。50円を入れると、選んだ曲を1曲流してくれる機械とのこと。マスターは「1曲目は自分の得意な曲を入れて、好きな子に上手なダンスをアピールする。2曲目は好きな子と一緒に踊れるように考えて選曲する」のだと青春時代を思い出しながら、ジュークボックスの思い出を語ってくれました。

慣れた手つきで鉄鍋に材料を放り込んでいくのをカウンター席から眺める私。店内を漂うケチャップや少し焦げた香ばしいにおいに浸っていると、あっという間にナポリタンができあがりました。
アイスコーヒーの氷は、一辺が30㎝ほどある箱型の大きな氷をピックで割るスタイル。透明で不ぞろいな氷が、宝石みたいにキラキラしています。

マスターが魂を込めて毎日作っているナポリタン。ひと口食べるとビビっときました。濃厚なケチャップにピリッと辛いコショウ。これまで食べた少し甘めのナポリタンとは全くの別物でした。
あえて言うなら「大人のナポリタン」。玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ベーコン、といった具材は一般的なナポリタンと同じですが、なんと言っても個性的なその味。所々に付いているおこげが、これまたいいアクセントです。

スマホを持たないマスターは、カウンター席でのおしゃべりか、店内に置かれた付箋での交流が基本。あまりおしゃべりが得意ではないという方は、この付箋に感想を書いていくと、マスターにきっとその思いが伝わります。
自慢のもので、細く長く店を続けていきたいと話す78歳のマスター。「とりあえず80歳までは続けることを目標に。そのあとは1年ごとかな」と口にするマスターは少し寂しそう。
私が取材に行った日は大盛況でした。滞在した1時間半で私を含め5人の来客。「いつもは一日に1人とか2人だよ。店は年中無休だけど、自宅も2階だし、仕事をしているという感覚は少ない」と話すマスター。適度に力を抜いているからこそが、長く続けられているのかもしれません。
ナポリタン一品で勝負をすること、それでも足しげく通う常連さんがたくさんいること。そこに全ての答えがある気がします。マスターが長年作り続けてきた特別な一皿をぜひ一度食べに行ってみてはいかがでしょうか。
TAKEYA(たけや)
住所 231-0055 横浜市中区末吉町4-86
電話 045-252-0255
営業時間 9:00~17:00(年中無休・臨時休業あり)
アクセス 京浜急行電鉄「黄金町駅」徒歩5分
※店内喫煙可
Weaveeライター/松井 美智子