横須賀・上町の坂の上にある「BROSS FACTORY SHOP」。
兄弟が営むこの工房では、100年前のミシンを相棒に、一着ずつ丁寧に服を仕立てています。静かな店内に並ぶ洋服やレザーアイテムからは、“手で作ること”の豊かさが伝わってきます。
流行よりも、体に馴染む「日常の一着」を

BROSSの服は、一見シンプルでありながら、どこかヨーロッパの香りが漂います。生地は都内や専門業者から仕入れ、肌触りや質感を確かめながら選んでいるそう。ベルギーリネンを使ったシャツなど、素材選びにもこだわりがあります。
「高級な素材だから選ぶわけではありません。手に取ったとき、肌が覚えている“気持ちいい”と思えるものを使いたいです」と店主の徳永さんは話します。
“自分らしく履ける” BROSSのパンツづくり

パンツは、店主自身が好きな履き心地を追求したパターンで制作しています。特徴的なのは、ウエストをきつく履かず、ベルトで絞って履くというスタイル。体にフィットしながらも、ギャザーがよるようなルーズなシルエットが生み出されます。
切り替えを縫い合わせることで、生地をクシュッとさせ、膝を前に出す立体的な構造を作り出すなど、独自の工夫が凝らされています。

縫製の難しいTシャツのような伸縮性のある生地も丁寧に縫い上げていきます。「生地が少しガタつくこともありますが、それも“味”だと思っています」と徳永さんは笑います。
兄弟でつくる、上町の小さな工房

横須賀中央駅から平坂を上った上町に、洋服、革製品を製作する工房併設のショップ「BROSS FACTORY SHOP」があります。店主である兄・徳永航之介さんと弟・竜之介さんの2人で立ち上げました。
当初は理容室の2階を間借りしていましたが、「もっと街の人が入りやすい場所に」と考え、2022年に現在の路面店へ移転しました。
屋号は「BROSS(ブロス)」は兄弟(ブラザー)に由来しています。ロゴデザインや内装づくりも、弟と二人で手がけました。鉄格子を思わせる大きなガラス窓、アンティーク家具など、店のすみずみまで“手仕事”の温かさが息づいています。
服づくりは、独学の旅から

地元、横須賀出身の航之介さんは、高校卒業後は音楽の専門学校で音響を学びましたが、コロナ禍で業界が一変。「自分が本当に好きなことを形にしたい」
そして選んだのが、もともと興味のあった洋服作りの道でした。独学の最初の一歩は、「既製の服をばらして構造を理解すること」でした。
「本を読むよりも、実物を分解して覚えた方が早い」と考え、実際に自分の服をほどいて型紙を取り、その形を再現することでパターンの仕組みを手で覚えていきました。
相棒は、100年前のアメリカ製シンガーの足踏みミシン

そして制作の相棒は、100年前のアメリカ製シンガーの足踏みミシン。知人が所有していたこのアンティークミシンを見て、「こんなにかっこいいものがあるなら、自分もやってみたい」と強く惹かれたそうです。
そうした“好き”という気持ちと、“かっこいいと思える道具で作りたい”というこだわりが、深く洋服作りの世界へと導いていきました。手と足の感覚で速度を調整しながら、縫い上げていきます。
海外へ届けたい、横須賀発のものづくり

「いつか、海外で自分の服を販売してみたいです」
各地での展示会を視野に入れつつ、イギリスやフランスなど海外で販売することを目標にしています。
「自分の作った服が、海の向こうでどんなふうに受け入れられるのか見てみたい」と話す表情には、静かな情熱が宿っています。
100年前のミシンで、今日も変わらず一針ずつ縫い上げる。
ボタンを一つつけるにも、手で糸を通す。
その姿は、効率を追う時代の中で“手間を惜しまない”という贅沢な選択を続ける職人そのもの。
「着る人が気持ちよくいられる服を作りたいです」大切にしているのは、流行ではなく着心地とシルエット。
毎日袖を通したくなるようなあなただけの“日常に寄り添う一着”を見つけにお店に訪れてみてください。
取材日 2025/9/8
※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。



スポット情報
◾️店舗名:BROSS FACTORY SHOP
◾️住所 神奈川県横須賀市上町1-45
◾️営業時間 10:00〜19:00
◾️定休日 不定休
◾️URL https://brossfactory.base.shop