【横須賀】組み合わせは無限大 オーダースーツと街に寄り添う「たかなし洋服店」
2026.04.01
三浦

【横須賀】組み合わせは無限大 オーダースーツと街に寄り添う「たかなし洋服店」

うみのとなり

ライター

うみのとなり

創業昭和29年、上町商店街にあるテーラーたかなしは、今では数少なくなったフルオーダーの洋服店です。昭和・平成・令和と時代を超えて、今もなお多くのお客様から愛されています。

こだわりのデザインと仕立て。オーダーは3万円台から

現代のオーダースーツの多くは、既成の型をもとに調整する「パターンオーダー」が主流です。しかし、テーラーたかなしでは、今も変わらず「ゼロから型紙を起こす」仕立てを続けています。高梨さんは、まず丁寧に採寸を行い、体のサイズだけでなく、筋肉の付き方、肩の傾き、立ち方や歩き方の癖までを静かに観察します。そうしてデザインするパターンはその人のためだけに描かれた、世界に一つの設計図です。

「腕が短い」「肩のラインが合わない」など、既製服では当たり前になってしまった悩みも、この工程があることで、美しいシルエットへと変わっていきます。服が体に合わせるのではなく、体に寄り添う服が生まれる瞬間です。

細部に宿る、その人らしさ

50種類以上の裏地やボタン、袖口の重ねボタン、斜めに入れたスラントポケットなど、細部の一つひとつを、店主の高梨さんはお客様と対話を重ねながら決めていきます。仕事のこと、日常の装い、どんな場面で着たいのか。会話の中から、その人にとって心地よい一着の輪郭が、少しずつ浮かび上がってきます。
丈夫であることはもちろん、ウエストを5〜6センチ調整できる縫い代をあらかじめ残すなど、長く着続けることを前提とした設計がなされています。人生とともに変化する体にも、できる限り寄り添いたい。その思いが、見えない部分にまで込められています。

若い世代の中には、スマートフォンに理想の画像を保存して持参する人もいるそう。時代によって変わるシルエットや空気感を柔軟に取り入れながら、「今の時代のクラシック」を形にしています。価格はオーダーでありながらスーツ上下4,1800円(本体価格38,000円)から。
メンズ、レディースはもちろん、Yシャツやブラウス、帽子まで幅広く手がけています。仕立て券は、ふるさと納税の返礼品としても選ばれています。

創業72年、先代の想いを受け継いで

横須賀中央駅から徒歩10分のところに、「たかなし洋服店」があります。今では、貴重になったフルオーダーのテーラーです。「生地にハサミを入れる瞬間の緊張感は、45年経った今も変わりません」と話すのは、2代目店主の高梨治さんです。
創業昭和29年に開店して以来、時代の変化に合わせて、多くのお客様の装いに寄り添ってきました。しかし、これまで多数の試練がありました。

突然の別れと、新社長の「一着目」

大学卒業後、都内の老舗洋服店で修行を積み、横須賀に戻り、父とともに店を切り盛りしていた高梨さん。しかし、父は64歳で突然この世を去ります。病気一つなかった父が倒れてから、わずか二日後のことでした。縫製職人を守らなければならない責任と同時に、「先代の服でなければ」と店を離れていく常連客もいました。

そんな中、高梨さんを支えたのは、父が築いてきた信頼関係でした。「新社長の一着目を、俺が着るよ。全部任せる」とある常連客が言い、任せてくれました。その一着を納めたとき、「お父さんの服と変わらない。いや、若い感性がある分、さらにいい」と声をかけられました。その言葉が、高梨さんにとって大きな支えとなりました。

100年の時を刻む「出し桁造り」の美学

たかなし洋服店が店を構えるのは、築100年を超える貴重な歴史的建築物です。大正から昭和初期に流行した「出し桁(だしげた)造り」という建築様式が用いられています。太い桁を外へ突き出し、その桁で深い軒を支える構造。
見上げれば、当時の職人たちが魂を込めて組み上げた木組みが、今も現役で建物を支えています。この一帯には、30軒以上の貴重な建築物が点在しています。高梨さんはこの風景を上町ならではの文化として守り続けてきました。

上町商店街の良さを次世代に

高梨さんは、上町商店街連合会の会長として、街の活性化にも力を注いできました。誇りとして語るのは、建物の美しさと、そこに暮らす人々のつながりです。若手が自由にアイデアを出し、高梨さんは行政との橋渡しや補助金確保など裏方に回る。新旧が共鳴するその姿勢が、上町全体の活気につながっています。長年の地域貢献が認められ、令和2年には神奈川県より「神奈川県優良産業人」として表彰されました。

高梨さんが思い描いているのは、街そのものを一つの博物館に見立てる「街中ミュージアム」という構想です。子どもたちの素朴な絵や、誰かの想いが込められた作品が、商店の軒先に自然と並ぶ。用事がなくても、理由がなくても、歩いているだけで心が少しほどけていく、そんな風景を、この街に残したいと考えています。

それは、父から受け継いだ「平和な世の中の楽しみ」を、一着のスーツという仕事の枠を超えて、街の佇まいとして表現していきたいという想い。人の暮らしに静かに寄り添い、時間をかけて積み重ねていく。その姿勢は、洋服作りと変わることなく、今も続いています。

取材日 2025/12/1
※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

ギャラリー

「出し桁(だしげた)造り」の貴重な建築様式の建物は築100年以上の歴史があります。
棚には、スーツやジャケット用の高級生地が整然とディスプレイされており、落ち着いたグレーやネイビーを中心に、多彩な色柄が揃っています。
国産から舶来生地まで約6000以上の生地サンプル(バンチブック)から選ぶことができます。
スポット情報

◾️店舗名:たかなし洋服店
◾️住所:神奈川県横須賀市上町1-46
◾️電話番号:046-822-4384
◾️営業時間:9:30~19:00
◾️定休日:木曜
◾️アクセス:横須賀中央駅より徒歩約10分
◾️URL:http://www.takanashi-suits.com

この記事を書いた人

うみのとなり

ライター

うみのとなり

横須賀在住取材ライター。マーケティング視点を強みに、「読まれる記事」「届く発信」で、地域の魅力と価値を発信中。Yahoo!ニュースでは月間MVAを4度受賞、実績に裏付けられた発信力あり。日本テレビ、大手・地域メディアで多数執筆し、約1000件以上の実績あり。農業・グルメ・観光・イベントまで幅広い分野を網羅、行政や企業とのタイアップ実績も多数。

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