創業昭和24年、横須賀にその名を刻むひれカツの名店「やなせ支店」。箸で切れるほどに、柔らかく― 先代が築き上げた味。それは、守るべき味であり、超えるべき壁でもありました。三代目、簗瀬元好さんが追い求めたのは、記憶の奥底に眠るあの日の“芳醇な旨み”。「やっと、親父の味に近づいた――」 その一言に、受け継いだ味と想いがにじみます。
ひれカツ定食(並)2,050円

横須賀でその名を知らぬ者はいない老舗「やなせ支店」。ここで供される名物「箸で切れるひれカツ」は、訪れる者を虜にする至高の一皿です。ラード100%の鍋に、衣を軽やかに振りかけ、温度を確かめるために油の中に手を入れる。ひれカツを投入した瞬間、シュワッという心地よい音と共に泡が立ち上がり、期待感が高まります。
厨房に広がる香ばしい香りが、食欲を刺激します。揚げあがるまでのワクワク感も醍醐味も一つ。ふんわりとしたキャベツを皿に盛り、その上に揚げたてのひれカツを乗せると、まさに完成の瞬間。目の前に広がる美味しそうなヒレカツの姿に、思わず笑みがこぼれます。

まず驚かされるのは、その唯一無二の食感。箸を入れると、スッと切れるほどの柔らかさ。
一口頬張れば、それはまさに“雲を噛む”かのよう。
しっとりと舌の上でほどける極上のひれ肉と、軽やかに響く衣の「サクッ」という音。その繊細なコントラストは、時間が止まったかのような至福の余韻をもたらします。
このひれカツを更なる高みへと昇華させるのが、ウスターソースととんかつソースを絶妙なバランスで配合したオリジナルのソース。フルーティーな酸味とコク深い甘みが複雑に絡み合い、目を閉じれば、芳醇な香りと奥深い味わいが口いっぱいに広がります。
この感動的な味わいの根底には、先代から受け継がれる秘伝の製法があります。
丁寧に開いたヒレ肉の筋を細かく切り、驚くほどの柔らかさを実現。衣には牛乳を加えてほんのりとした甘みを引き出した溶き卵と、生パン粉を使用。この一つひとつの丁寧な仕事が、他では決して味わえない「やなせ支店」ならではの芳醇な旨みと軽やかな食感を生み出しています。
先代の味を追求し続けて約50年

横須賀中央から徒歩3分のところに、創業昭和24年のひれカツの老舗 やなせ支店があります。暖簾をくぐると三代目の簗瀬元好さん(77歳)と富美さん(77歳)のご夫婦があたたかく迎えてくれます。

元好さんは3歳の時に食べた先代のひれカツの美味しさが忘れられず、料理人になることを決意。先代の味を守り続けたいと、大学卒業後にホテルでの修行を経て25歳の時に、やなせ支店を開店しました。
「やっと親父の味に近づいた」

「この前ね、”やっと親父の味に近づいた”と言ったの。先代の味を求め続けてきた主人は職人だと思うのよ」と富美さんは笑顔で話します。厳選した素材と対話するように真摯に向き合う、丁寧な下拵えと、ゆるぎない基本に裏打ちされた調理。元好さんが作る一皿からは、食へのひたむきな愛情と、妥協を許さないプロフェッショナリズムが静かに薫り立つようです。

「開店時から、先代の味を知る常連さんが来店して下さり、私たちはお客様に育てていただいたと思っています」創業した昭和24年は日本が戦後の復興を始めた時期、そして、ご主人が継いだ1970年代は戦後の復興と経済成長の中で重要な変化を遂げた時期でした。
看板メニューのひれカツ 上(2,850円)、並(2,050円)のほか、ミックスフライ定食(2,150円)、特製トンテキ定食(2,950円)、揚げたてカツカレー(1,700円)も人気です。ランチはもちろん、夜はビールやお酒と一緒にひれカツを味わうのも乙なひととき。創業当時から変わらぬ店内で、昭和、平成、令和の月日を重ねた「やなせ支店」のひれカツをぜひ味わってください。
取材日 2025/4/8
※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
ギャラリー



スポット情報
◾️店舗名:やなせ支店
◾️住所:神奈川県横須賀市若松町1-9
◾️電話番号:046-825-9403
◾️営業時間:12:00~14:00 17:00~20:00
◾️定休日 :月曜・日曜
◾️アクセス:京急線横須賀中央駅から徒歩3分
◾️URL https://yanaseshiten.stores.jp