逗子・葉山の豊かな自然の中で、生産者の信念と徹底したこだわりのもとで育てられる「葉山石井牛」。きめ細やかな肉質と上質な旨みは、多くのシェフを魅了しています。今回は、その唯一無二のブランド和牛「葉山石井牛」の魅力と、その味わいに惚れ込んだイタリアンシェフが生み出す極上の一皿をご紹介します。
独自の和牛ブランドを生み出した
「石井ファーム」
逗子・葉山駅からバスで15分。京急バス黄金坂橋停留所より徒歩すぐの場所にある石井ファームを営むのは9代目代表の石井祐一さん。独自の和牛ブランド「葉山石井牛」「葉山クイーンビーフ」を生み出し、加工・販売まで手がける“牛のプロ”です。
「葉山石井牛」ってどんな牛?

葉山石井牛とは、ホルスタインと和牛との交雑種の雌牛のことを指します。霜降りに定評のある葉山牛とは異なり、赤身が多く肉本来の旨みを味わえるのがポイントだといいます。高級和牛でありながらもさっぱりとしていて、次から次へと箸が進みます。
牛の健康を餌から考える
消毒を済ませ、まずはじめに向かった先は餌の自家配合を行う配合場。そこには牧草やトウモロコシだけではなく、たくさんのおからや酒粕がありました。「"飲む点滴”ともいわれている甘酒を牛に与えたらどうなるだろう?」という発想から、石井ファームでの餌の自家配合がスタートしたといいます。

「今では炊いたお米を中心に、トウモロコシなどの穀物、熟成酒粕・おから・ビール粕などをブレンドし、牛の健康を腸から整えるべく、工夫しています」と石井さん。
炊いたお米まで入れているんですか!? と驚く私に、「割れたお米を釜炊きして入れています。これが入っているかいないかでは大違い。入っているものを食べた牛は脂が甘くなり、香りも豊かなるように感じるので、このひと手間を非常に大切にしています」と教えてくれました。

※食品残渣(食品づくりの過程で出る酒粕やおからなど)
和牛ファーストな環境づくり
次は牛舎へ。石井ファームの牛は細かく健康管理をされているため、大きな病気にかかることは稀なのだそう。また、痛みを伴う鼻のリングや角を切り落とすといったことはしておらず、常に牛に寄り添うように飼育しています。

そして石井ファームの牛舎が他とは決定的に違う点、それは「ニオイ」です。牛舎といえば、独特の鼻を刺すようなニオイがあると思っていましたが、ここでは牛本来のニオイのみ。
その秘密を石井さんは「無菌状態のおがくずに2カ月間発酵させた牛のフンを含め混ぜ合わせたものを牛舎に撒いています。この堆肥は豊富に菌を含んでおり、その上に牛がフンをしてもニオイが分解されるため、独特のニオイをほぼ感じません」と話します。

人間の何千倍もの嗅覚を持ち、とても繊細な動物である牛が少しでもストレスフリーで過ごせるよう、工夫されているのです。
石井ファームでは2017年に神奈川県の肥育農家(※)として初めて農場HACCPを取得しました。
農場HACCP認証とは、第三者である中央畜産会が認証する制度で、徹底した衛生管理と日々の記録体制が求められるため、関係者の間では取得難易度の高い認証として知られています。
※肥育農家とは繁殖農家などから購入した子牛を食肉として出荷できる状態にする農家のこと。
ふらっと寄ってちょっと豊かに。
直売所「葉山マルシェ」

石井ファームの敷地内には葉山石井牛や葉山クイーンビーフ、地元の新鮮野菜などが販売される「葉山マルシェ」があります。ここでは、牛肉はステーキ用やハンバーグのほか、葉山石井牛を使った弁当や惣菜も並びます。

育てた牛をどう手渡すかまで、自分たちで考えていることが、この売り場にも表れていました。

石井さんによると、こちらのソースをつけて食べるのもオススメとのこと。

2020年5月にオープンした葉山マルシェ。計画段階では「肉を売るのは簡単ではない」と、周囲から反対の声もあったそう。それでも、“売る場所をつくり、価値を生み出していくこと”を目指して諦めずに突き進んだ結果、反対していた人たちもどんどん力を貸してくれるようになったといいます。今では各方面から客足が途絶えない人気店となりました。
「不可能って、やっぱり無いんですよね。ちゃんとやれば、できちゃう。そこが面白い部分でもありますよね」と話す石井さんからは、熱いパッションが伝わってきました。
そんな石井さんの想いとこだわりが詰まった葉山石井牛の味に惚れ込み、店で提供したいと願う料理人も少なくありません。
イタリア仕込みのシェフが惚れた
葉山石井牛

逗子・葉山駅からバスに揺られること20分。三ヶ下海岸停留所より徒歩2分のところにあるイタリアンレストラン「TRATTORIA PIZZERIA 207葉山」のシェフもその一人です。目の前に広がる相模湾を一望できるこのレストランには葉山石井牛を使用した絶品料理があると聞き、シェフの兼森さんのもとへ伺いました。
兼森シェフはイタリアで3年間修業し、本場の味を学んだイタリアンのスペシャリスト。

2022年4月23日にオープンしたこちらのお店は、イタリアのアマルフィ地方をコンセプトにナポリ系ピザやパスタを中心に老若男女が楽しめるメニューを提供しています。

感動の味。葉山石井牛以外は
考えられませんでした。

知人の紹介で石井ファームを訪れた兼森シェフは、脂と赤身のバランスが絶妙な葉山石井牛にいたく感動したそうです。
「忘れられない味でしたね。食べても食べても食べ飽きない。もうこれ以外は考えられませんでした」と当時を振り返る兼森シェフ。
本場イタリアはもともと霜降りよりも赤身のお肉が主流で本場の味に最も近いこと、更に葉山は落ち着いた世代が多く暮らす土地柄ということもあり、葉山石井牛のタリアータは定番メニューの1つとなりました。
「提供する時は『石井さんがこだわって生産した牛肉なんです』とお伝えしています」と兼森シェフ。

他にも葉山石井牛を贅沢に使ったボロネーゼも。「ステーキ肉を使用する時に切り落とす端の部分すら無駄にしたくない」という想いから、大小違う2種類の牛肉を使い食感に変化をつけているそうです。また、ボロネーゼは子どもに大人気。普段食べるミートソースに比べて格段と旨みが際立っているため、「美味しすぎる!」とおかわりする子もいるのだとか。
人と街をつなぐ
地域密着型レストラン

「地元の生産者と連携を取りながら葉山を盛り上げたいですね」と話す兼森シェフ。地元の人はもちろん、他の地域の人たちにも愛される街づくりへ。
兼森シェフが目指す未来が、どことなく石井さんと似ている気がするのはきっと、自分のためではなく、誰かのために本気になれる2人のプロフェッショナルの熱い想いが伝わるからなのかもしれません。
取材日 2026/04/13(石井ファーム/葉山マルシェ)
2026/04/28(TRATTORIA PIZZERIA 207)
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。
スポット情報
石井ファーム/葉山マルシェ
■住所:〒240-2115 神奈川県三浦郡葉山町上山口954-1
■電話/FAX:046-854-4629
■営業時間:10:00~17:00
■定休日:火・水曜日(その他不定休)
■アクセス:京急逗子線「逗子・葉山駅」から京急バスで「黄金坂橋」停留所下車、徒歩5分
■駐車場:5台
■e-mail:y.ishii773@jcom.home.ne.jp
■HP:石井ファーム │ 神奈川県葉山町に根ざした循環型ファーム
スポット情報
TRATTORIA PIZZERIA 207
■住所:〒240-0111 神奈川県三浦郡葉山町一色 2389-6
■電話:046-815-1811
■営業時間:【weekday】lunch 11:30-15:00 / dinner 17:30-21:00
【weekend】11:30-21:00(15:00-16:00は冷前菜、ピッツァ、ドルチェのみ注文可)
■定休日:水曜日
■アクセス:京急逗子線「逗子・葉山駅」から京急バスで「三ヶ下海岸」停留所下車、徒歩2分
■SNS:TRATTORIA PIZZERIA 207 葉山本店(@hayama207) • Instagram写真と動画所:神奈川県三浦市初声町下宮田100