京急沿線・川崎区エリアで、ハンドメイドや自らの特技でまちを元気にするママたちがいます。地域のママたちが物販やイベントでまちを盛り上げる、「川崎区盛り上げ隊!」を率いるのは、自らも小学6年生の息子を育てるママである米澤奈緒(よねざわ・なお)さん。
今回は、川崎エリアにママたちの笑顔を広げる米澤さんに、活動に取り組む動機や地域交流拠点「ParkLine870」との連携、今後の目標について伺いました。
ネットワークゼロの主婦が、手仕事を武器に地域交流
「『川崎盛り上げ隊!』の『!』は、ママたちの元気とパワーを表現したもの。自分なりのこだわりなんです」そう語るのは、「川崎区盛り上げ隊!の」発起人であり、隊長を務める米澤さん。
およそ15年前、結婚を機に川崎区に引越し、親族も友達もいない環境で1からのスタートを切りました。
川崎の将来について考え始めたきっかけは、出産。「この子にとってはこのまちがふるさとになるんだ」。子育てしながら、そんなことを考えるようになったと言います。
「こどもの未来のために、まちづくりに関わりたいと考えたのはそのころです。でも、当時はよそのまちから来て、ほぼワンオペで子育てするただの主婦。まちづくりのノウハウも、ネットワークも、何も持っていませんでした」
そんな米澤さんが、たったひとつ持っていたスキルが、「手仕事」です。
「昔から裁縫が好きだったので、ハンドメイドのイベントに参加して、自分で作ったものを販売していたんです。そこで、もし得意な裁縫を通して地域の人と交流ができたら、まちの活性化にもつながるかもと思い、ハンドメイド作品を販売するイベントサークルを立ち上げました」
本気でやるからには、仲間は多い方がいい。米澤さんが幼稚園のママ友たちに声をかけると、数人のハンドメイド好きが集まりました。
「私と同じような子育て中の人が、自分の好きなことを通じて一歩外に出るきっかけが作れたらすてきだなと思いました。話してみるとみんな共感してくれて、子育てで一度は手放した趣味や特技を、もう一度楽しみたいと考えている人ばかりだったんです」
こうして集まったメンバーで、はじめての物販イベントを開催したのが2016年。踏み出したその一歩は「川崎区盛り上げ隊!」の前身となりました。
ママたちのスキルと笑顔でまちを明るく!市や地元企業とコラボも
「はじめは裁縫好きのママ友4人で小さなイベントを企画・運営するということを繰り返しました。回を重ねるにつれ、私たちの活動が知られるようになって、『自分も好きなことや得意なことで何かしたい』という人が集まったんです。手仕事だけでなくヨガの講師やマッサージ師、カメラマン、パフォーマーと多様な仲間ができましたね」
活動が本格的になり、ママたちのまちづくりチーム、「川崎区盛り上げ隊!」が正式に誕生。ハンドメイド品の販売だけでなく、多様なメンバーがそれぞれのスキルを生かせるイベントを企画し、現在に至るまで川崎エリアを盛り上げてきました。
2024年7月現在、メンバーはなんと48人。「つながりがつながりを呼び、地元企業や自治体と連携した企画も手がけるようになりました」と米澤さん。
「直近では7月21日に、地元川崎のスポーツクラブ『ファンズアスリートクラブ』やホテル『川崎キングスカイフロント東急REIホテル』と連携し、夏休み中の親子連れに向けたイベントを実施します※。夏休みの思い出が作れて、絵日記も自由研究も1日で捗るイベントにしたいと企画しました。ワークショップにヨガ、マッサージ、アウトドアスポーツやサバイバルゲームなど、親子でたっぷり楽しめる内容になっているので、たくさんの人に来ていただきたいですね」※2024年8月現在、イベントは終了しています。
自主企画だけではありません。いまやエリア内のイベントに引っ張りだこの「川崎区盛り上げ隊!」。週末ごとに、異なるイベントに参加しています。 「場所を選ばず、呼ばれたらどこにでも行くんです。お母さんたちの笑顔でまちの隅々までにぎやかにしたいので」と笑顔で語る米澤さん。
イベントでの米澤さんのトレードマークは、ハンドメイドのカチューシャ。カチューシャをつけてマルシェに立つ米澤さんの姿を見かけると「『盛り上げ隊!』が来ている」と認識する人も多いのだそうです。
認知度が高まったことで、大きなオファーも訪れました。
「いまはちょうど、市政100周年を記念したハンドメイドグッズの制作に携わっているんです。こんな大きな機会に関われるのも、これまで『川崎区盛り上げ隊!』の仲間と築いてきた信頼と実績があるからですね」
「誰もがやりたいことをやれる場所」、地域交流拠点を広めたい
「川崎区盛り上げ隊!」にとって、重要な活動拠点のひとつとなっているのが、京急電鉄・八丁畷駅前の地域交流拠点、「Park Line 870(パークラインハッチョウ)」です。
2023年4月のオープン時や2024年の1周年イベントでは、京急電鉄と連携してイベントの企画・運営を担当してきたほか、現在も広場を利用して、ハンドメイド作品を出展するマルシェを定期的に開催しています。
「物販をやるイベントをしていると『私もやりたい』という声をよくいただきます。わたしももともとは普通の主婦だったけれど、ごくふつうの住民が『やりたいことを自由にやれる場所』ってとっても貴重です。でも、せっかく『Park Line 870』のようにひらかれた場所があっても、使えることすら知らない人や、どうやって借りればいいのかわからない人はとても多い。私たちが『Park Line 870』を活用することで、まちの人が地域交流拠点を活用する入り口になれていることが、嬉しいですね」
一方、何度も『Park Line 870』を活用してきた米澤さんが、長年感じている課題もあると言います。
「告知や集客の場がないことですね。自分たちのSNSでも発信しているけれど、どうしてもイベント数が多いので他の投稿に埋もれてしまう。駅の構内や駅前のように、人の目に触れる場所に掲示板を設置するなど、まちの人に直接届く告知場所を用意してもらえるとうれしいですね」と、京急電鉄へのリクエストも明かしてくれました。
いまの仲間を大切にして、「続けていくこと」が何よりも大切。
川崎エリアの地域交流を牽引する存在となりつつある「川崎区盛り上げ隊!」。まちに人々の交流と笑顔を増やしてきた米澤さんに今後の活動目標を伺うと、いまの率直な思いを話してくれました。
「今後チームを大きくしたいというよりは、いま取り組んでいることをしっかりと継続していきたいですね。人が増えるとできることや影響力も増えていくけれど、そのぶん変わらず続けていくことが難しかったりもします。いまいる仲間が安心して楽しく活動し続けられる『川崎区盛り上げ隊!』を私が守っていくことで、最終的に地域の役に立てればいいですね」
最近は、京急沿線子育て応援ネットワーク『Weavee(ウィービー)』のメンバーとしても活動している米澤さん。今後の取り組みは、まだ構想中とのこと。
「『Weavee(ウィービー)』では、京急沿線で活躍するママクリエイター同士が連携し、お互いのスキルをマッチングした地域ビジネスの創造を目指す活動などを行なっています。『川崎区盛り上げ隊!』でなにができるのか、まだ具体的なイメージができているわけではないのですが、新たなご縁がつながって、よりみなさんにワクワクしてもらえるような取り組みに参加できればうれしいですね」
知り合いのいないまちで、たった1人で子育てを始めた米澤さんはいま、ママたちが一歩踏み出す機会を生み、まちの人々の出会いと笑顔の中心にいます。