横浜を水の都に!地域主導で進む「水上交通運行プロジェクト」
横浜というと、横浜港や山下公園、横浜赤レンガ倉庫などの海沿いのエリアを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、今、大岡川・中村川・堀川に囲まれた関内・関外地区が水運を活かしたまちづくりで盛り上がっています。
本記事では、水上交通をつかって横浜の魅力を未来へつなごうとする人々の活動をご紹介。「よこはま運河チャレンジ」に取り組む濱橋会の川井喜和さんにもインタビューを行いました。
大岡川と水上交通常設化の取組み紹介
■関内・関外地区活性化協議会
関内・関外地区はみなとみらい21地区と山下ふ頭周辺地区の間に位置し、「横浜の開港の地」として横浜経済の中心を担ってきたエリアです。横浜港に流れる大岡川の水運によって多くの人や物が行きかうことで、横浜の豊かさを支えてきた歴史ある地区でもあります。
そんな関内・関外地区ですが、近年は隣接する地区と比べ、商業・業務分野において厳しい状況にありました。そこで、関内地区に市庁舎が移転するのを機に令和2年から令和12年までを計画期間として、地域資源の活用と新しい魅力の創出を目指した取組みが行われています。
■NPO法人 HamaBridge濱橋会
濱橋会は、「よこはま運河チャレンジ」や運河の清掃活動、地域のイベントなどを通して横浜のウォーターフロントの強みを活かしながら、地域連携の和を広げる団体です。まだまだ知られていない横浜の魅力や街の資源をどのように発信・活用していくべきかについてアイデアやビジョンを共有しながら、日々活動しています。
■よこはま運河チャレンジ
濱橋会が企画・運営している「よこはま運河チャレンジ」は、昨年の開催で11年目を迎えました。横浜のベイエリアや関内・関外地区エリアを水上交通でつなぎ、横浜の魅力や歴史を発信するイベントです。会期中は、横浜ならではの水運を利用した一日限定のクルーズや、プレジャーボート・SUP・シーカヤックなどによる水上パレード、食の市、音楽イベントなどが開催。横浜のウォーターフロントとしての魅力を多くの人に知って楽しんでもらうべく、毎年、企画されています。
濱橋会 川井喜和さんをインタビュー
関内・関外地区で活動するNPO法人 HamaBridge濱橋会の副理事長、川井 喜和さんにお話を伺いました。川井さんは、濱橋会とは別に本業として伊勢佐木町にある川本屋茶舗という老舗茶屋を兄弟で営んでおられます。濱橋会のメンバーの多くは川井さんのように本業の合間をぬって、濱橋会として活動しておられるそうです。ここからは、そんな濱橋会の取組みや、川井さんのプロジェクトにかける想いを伺いました。
■「よこはま運河チャレンジ」に対する川井さんの想い
この街で生まれ育った私はもともと「横浜の川は汚れていて、人々が近付きたがらない場所であり、街を分断するもの」というイメージがありました。しかし、川の歴史に触れたり、街の魅力を考えたりしているうちに、次第に「川は人と人をつなげるもの」だと思うようになりました。濱橋会が毎年企画している「よこはま運河チャレンジ」は、まさにその想いを実現したイベントであり、この企画を通して地域の人々に「わたしたちの街にこんな素敵なものがある」と気づいてもらえればと思っています。
■「日本一非動力船と動力船が行き交う運河にしたい」
オランダ・アムステルダムやイタリア・ヴェネチアなどのように、横浜を水の街にしたいです。横浜は河川によって人やモノが運ばれてきたからこそ、豊かに成長してきました。そんな歴史的背景を踏まえながら、川をこの街の資産として活用し、横浜ならではのまちづくりをしていきたいですね。山手線のように環状に「水の駅」を置き、水上交通で回れる街をつくりたいと思っています。大岡川や中村川、堀川を結ぶ「よこはま運河」は、SUP・シーカヤックなどの非動力船や、水上交通の動力船など、さまざまな船が行きかう運河です。今後も非動力船と動力船が共存し、日本一多くの船が行きかう運河に育てていきたいです。
■水上交通の可能性や魅力
バスや電車などの公共交通機関は「いかに大量の人数を短時間で運べるか」が重視されてきました。しかし、ストレス社会のなかで忙しなく暮らす人が増えた現代では、日常の喧騒から離れられる「余白の時間」が求められるようになったと思います。
水上交通は、移動しながら景色や水音に癒されたり、水上の静けさを味わえたりする、まさに「余白の時間」をつくれる交通手段。とくに、関内・関外地区は2〜3キロ圏内に特色あるさまざまな街が密集したエリアなので、その分、移動に対してさまざまな価値を見出せるのではないかと期待されています。
また、移動ルートに制限がある陸上の交通手段と違って、水上交通で移動できる海や河川は世界中と繋がっており、電車交通とは異なるネットワークをもてる可能性があるのも魅力に感じています。
■プロジェクトを実現する難しさ・今後の課題
水上交通運行プロジェクトを実現させて街の活性化につなげるためには、ウォーターフロントの開発が必要です。水の駅を利用してもらうためには、その駅の近くに目的地となるポイントがなくてはなりません。
たとえば、私は南区宿町の蒔田公園あたりに将来、水の駅をつくりたいと考えているのですが、そのために蒔田公園でイベントを定期的に開催したり、近くの日枝神社などの歴史的スポットを盛り上げたりする必要があると思っています。
横浜には、2〜3キロ圏内にさまざまな特色をもった街が密集しており、素敵な飲食店や魅力を秘めた小売りのお店などが詰まっています。そんな個々のお店が自分たちの魅力を発信していくことで街の魅力が底上げされ、それが水上交通運行プロジェクトの実現につながると思っています。