戦後の闇市がルーツの「野毛のまち」。屋台、立ち飲み、居酒屋……。今でも500店近くの飲食店が集まっています。
生まれも育ちもハマっ子の私は、野毛といえば「夜のまち」のイメージ。ただ、今回向かったのはランチタイムの野毛です。夜の野毛とは一味違う体験ができました。
令和に出合う昭和な七輪
京急本線「日ノ出町駅」で電車を降りたのは、お昼の12時になる少し前。頭の上の太陽が街を明るく照らしていますが、夜と変わらない街の活気。ランチタイムでも野毛ならではの雰囲気を感じられる店があると聞いて、さっそくお邪魔したのは「野毛☆大夢(たいむ)」です。

野毛☆大夢は、昼の12時オープン。立ち飲みやカウンターでの飲食ができ、これぞ野毛!を感じられる店です。
屋外の立ち飲みスペースでは、「はしご酒」を考慮して食べ物も飲み物も全て330円でサービス。店内で提供されるものより量を少し減らしていますが、お手頃価格で気軽に飲める野毛らしさがあります。

店内1階は10席のカウンター。店員や隣の人との距離が近く、屋台風で打ち解けやすい雰囲気です。
ひとりで来店した私ですが、カウンターに立つ店員さんと会話が弾みます。その日厨房にいた店員さんは、当時店長をしていた高校時代の友達に誘われて、この店のスタッフになったのだそう。「7年経った今では責任者です」と、はにかみます。

友達同士でくつろぎながら野毛の気分を味わいたい人は、2階席もオススメ。
仲間同士でテーブルを囲みながらおいしく楽しく昼飲みができそうです。2階へ行くときは階段が急なので、足元にご注意ください。
野毛☆大夢の醍醐味は、なんと言っても目の前の七輪(しちりん)です。屋外の立ち飲みでも店内飲食でも、直径20cmほどの七輪を1〜2人で使えるという贅沢。
注文したホルモンや魚介を焼きたてで食べられるのはもちろん、ジュージューと焼ける音を聞きながらできあがるのを待つのも楽しい時間です。

※いずれも2026年3月店内価格
メニュー表を見ていて気になったのは「IKOKA(いこか)」。名前の意味を店員さんに聞いてみると、IKOKAとは「い」ろいろ「こ」りこり「か」らいの略だと教えてもらい、納得です。軟骨や砂肝など食感がコリコリしたものの盛り合わせでした。
初めて来店した人でも話しかけやすいように、所々にネタになるような名前のメニューにしているのだとか。

魚介類は横浜市中央卸売市場から毎日仕入れているので新鮮!
七輪で焼いていると香ばしい匂いがしてきて、食欲をそそります。カニみそには元々味が付いていて、焼く前に卵といっしょに豪快に混ぜるのがコツとのこと。
焼きながらも食べるタイミングが分からず、店員さんにこの日2度目の質問。すっかり打ち解けて、気づけば私も野毛の一員です。
横浜市中央卸売市場の記事はこちら🐟
スポット情報
野毛☆大夢
■住所:〒231-0064 神奈川県横浜市中区野毛町2-79
■電話番号:045-250-0006
■営業時間:月~木・日・祝12:00~22:00(L.O.21:00)
金・土・祝前日12:00~23:00(L.O.22:00)
■定休日:年末年始
■アクセス:京急本線 「日ノ出町駅」 徒歩5分
■WEBサイトURL:野毛 大夢【公式】
カフェときどき美術館
おなかいっぱいになって、「ちょっとお茶するところはないかな」と散歩をしていて見つけたのは、「珈琲・紅茶・抹茶の店」という気になる看板。ドアを開けるとベルがカランとなり、「小さなところですが……」と控えめな店主が迎えてくれました。
店の名前は「茶処(ちゃどころ)しんり」。店主の義父が関わっていた会社「新利洋行(しんりようこう)」からもらった名前だとのこと。夫が「退職後の仕事にしよう」と2002年12月に始めた店を、引き継いだのだそう。

1人では店の運営が大変だと、友達や娘さん、姪っ子さんが日替わりでお手伝い。家庭的でなんとも温かい雰囲気の店内です。
壁一面には、額縁に入った絵がずらり。「茶処しんり」では、アマチュアのアーティストに限り、毎月1組ずつ無料で店内壁面を貸し出しているのだとか。残念ながら、この小さな美術館は2027年末で終わりになる予定ですが、最後の月まで予約がいっぱいです。

鏡の奥に映るのは、店舗入口
カフェメニューを楽しむのはもちろん、毎月変わるアート作品を眺めるのもひとつの楽しみ方。店内にはピアノ曲が流れ、のんびりとした時間が流れています。
入口の扉やトイレ壁面にあるステンドグラス風の装飾は、店主の友達が作ったというガラスアート。2人の会話が聞こえてきそうな優しい雰囲気のアートにほっこりします。

店内にはミルとサイフォンが4台ずつ。珈琲の種類ごとに機械を使い分けているというこだわりっぷりです。
珈琲や紅茶へのこだわりは、夫から引き継いだものなのだとか。夫婦の思い出がつまっているのだろうと想像しながら、ずらりと並んだサイフォンをカウンター席から眺めます。

(ケーキセット税込み800円)
手作りの粒あんを山盛りに添えた抹茶ロールケーキ。粒あんは、ほんのり塩味。さっぱりとした甘さで、抹茶のケーキとよく合います。
ケーキと一緒に味わうのは、自慢のサイフォンで入れた氷温(ひょうおん)熟成珈琲。0℃以下でじっくりと熟成された氷温熟成珈琲は、雑味がなく、まろやかな味わいになるのだそう。あまりブラックを飲まない私でも、苦みが控えめで飲みやすく感じました。しっかりと香るのも氷温熟成ならではなのだとか。

元茶道の先生だという店主が入れる抹茶も一服の価値ありです。
抹茶を立てると店内いっぱいに広がるお茶の香り。思わず深呼吸をしたくなりました。 抹茶に添えられているのは、わらび羹(かん)。わらび餅ではなく、わらび粉を固めて羊羹(ようかん)のようにしたもの。とは言え、羊羹より柔らかく、わらび餅より硬く、ゼリーくらいの食感です。

店内にある写真付きのメニュー表は、姪っ子さんの手作り。友達や家族もみんなで一緒に店を作り、支え、楽しみ、それに応えるかのように今日も店主はステキなカフェメニューを提供し続けています。
スポット情報
茶処しんり
■住所:〒231-0064 神奈川県横浜市中区野毛町2-87
■電話番号:045-231-1337
■営業時間:10:00~18:00
■定休日:月曜日・火曜日
■アクセス:京急本線 「日ノ出町駅」 徒歩6分
■WEBサイトURL:Facebook
ひる野毛で野毛デビュー
人情あふれるまち「野毛」は、昼でも健在。飲食を楽しむだけでなく、人とのつながりや出会いという体験がおみやげになり、また行ってみようかなという気持ちにさせてくれます。
昼の時間帯は野毛デビューにぴったり!昭和の魅力いっぱいの野毛の街で、古き良き横浜のディープな街を感じてみてはいかがでしょうか。
取材日 2026/02/25(茶処しんり)
2026/03/16(野毛 ☆ 大夢)
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。