京急本線「京急東神奈川駅」から10分ほど歩くと、神奈川区役所が見えてきます。その向かいにあるのは、ぬのや呉服店を改装した「横浜マルニカフェダイニング」(以下、マルニカフェ)です。
「マルニ」の名前は、ぬのや呉服店の家紋「丸に二つ引き」に由来していて、カフェになっても変わらずお店を見守っています。
お店の外観は、呉服店を営んでいた当時のまま。宿場町の面影を残しながら、現代の横浜の食を味わうことができます。マルニカフェは、今と昔が重なった場所でした。

横浜の名産を使った
オリジナルメニューを味わう
横浜で生まれ育った店主が作るのは、横浜にゆかりのある食材を取り入れたメニューです。
ランチメニューの看板商品である「かながわ丼」には、神奈川を代表する野菜のひとつである小松菜と横浜市内では唯一の納豆職人が作る「おとめ納豆」が使われています。

小松菜は、生のものを刻んだ状態。私が小松菜を食べるときはいつも火を通して使うので、生で食べるのは初めてでした。生でもおいしく食べられるように、緑色が薄くて、あくが少ないものを選んで仕入れているのだそう。
醤油も一緒に提供されますが、まずは醤油をかけないで食べるのが「かながわ丼」です。生の小松菜は、自家製ドレッシングと岩井の胡麻油で味付けしてあります。ちなみに、この胡麻油も神奈川区産で有名なものです。
シャキシャキとした生の小松菜に、しっかりとした豆味のおとめ納豆。豪快に混ぜてもこぼれる心配のない深めのどんぶりで、急いでいるわけではないのに、思わず掻き込むように食べてしまいました。

スープとサラダは月替わり。
※おとめ納豆のパッケージは撮影用のため、
セットには付きません
デザートにいただいたのは、横浜ローズフロート。横浜市の花であるバラのシロップを使ったサイダーです。
まずは、ストローを深く挿して、下にあるシロップだけを飲みました。鼻から抜ける気高いバラの香りに、日常のひとときが特別なものになります。
バラのシロップと一緒に入っているのは、透明なサイダー。混ぜると全体がほんのりピンク色に染まり、見た目にも楽しめました。ソーダと濃厚なバニラアイスを混ぜると、シュワシュワと泡が立ち上り、のどかな時間がゆっくりと流れていくのを感じられます。

壁に描かれたマルニの印と共に
マルニカフェではこの他にも、横浜市内で作られたビールやコーヒー、横浜市産の豚肉である「はまぽーく」や横浜市産の「清水屋ケチャップ」を使ったランチメニューを提供しています。お昼時を逃しても大丈夫。マルニカフェは、11時から17時まで、いつでもランチメニューを注文することができるのです。
今も息づく 呉服店
店内には「ぬのや呉服店」だった時の名残があちこちに見られます。
テーブルは、着物をしまうのに使っていた桐ダンスをリメイクしたもの。タンスだった時の金具もあえて残してあります。50年以上の歴史を感じるテーブルです。

店内の壁には「東海道五拾三次之内神奈川台之景」を模したチョーク画が描かれています。描かれているのは、まだ神奈川宿がにぎわっていた頃の景色で、現在の横浜駅の場所は海になっています。
その壁画の片隅に貼られているのは、着物から切り取ったという3人の女性が描かれた浮世絵風の布です。いつまでも呉服店と共にありたいと願う店主の想いを感じました。

思い出を預かり 新しい思い出に
マルニカフェがオープンしたのは、2018年。それまで、小上がりの着付けスペースだった場所をカフェスペースに改装しました。
店前の通りに並んでいた呉服店も時代と共に少なくなり、ぬのや呉服店に来店するお客さんも次第に減っていったそうです。そんな中、当時呉服店を営んでいた両親にカフェに改装することを提案した店主。初めは渋っていた店主の両親も、お客さんでにぎわう店内を見て嬉しそうにしていたといいます。

マルニカフェダイニングを立ち上げた店主
店主の両親が営んでいた呉服店を改装するきっかけになったのは、アメリカの西海岸へ旅行に行った時のこと。現地では、使われなくなった自動車工場を改装してクラフトビールの醸造所にしているお店がいくつもあったそうです。それを見た店主は、呉服店をカフェに改装して、また蘇らせることができるかもしれないと思ったそうです。

カフェをうたっているお店ですが、現在でも和小物を販売しています。呉服店を営んでいた当時のまま置かれているので「値段を見るとバブリーなのが面白い」のだとか。現在は表示されている価格ではなく、相談しながら在庫限りで販売しています。
また、着物や浴衣の染み抜きと丸洗いは、現在も受け付けています。呉服店を営んでいた当時の業者さんとのつながりは今でも続いていて、着物を愛用している人をそっと支えているのです。
街の歴史のページになる
「あんまり昔はよかったと言うと、説教臭くなっちゃうから」
そう話す店主は、呉服店の記憶を残しながら、横浜の食や新しい過ごし方をこの場所に加えてきました。そして、ぬのや呉服店が歴史を作ってきたように、いつかはマルニカフェが街の記憶となることを夢見て今日もお店を続けているのです。
スポット情報
横浜マルニカフェダイニング
■住所:〒221-0823 神奈川県 横浜市神奈川区二ツ谷町6-3 ぬのや内
■電話番号:045-322-1712
■営業時間:11:00~17:00/L.O.16:30
■定休日:日曜日、祝日
■アクセス:京急本線 「京急東神奈川駅」 徒歩10分、「神奈川駅」徒歩12分
■WEBサイトURL:【公式】横浜マルニカフェダイニング
■Instagram:Instagram
■Facebook:Facebook
取材日 2026/09/11
※本記事に掲載されている情報は取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますので、お出かけの際は事前にご確認ください。